アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を始め、多数の映画やゲームなどに登場するにが「ロンギヌスの槍」です。
その出典はキリスト教における聖槍(Holy Lance)で、この槍を所有する者は世界を制する力を与えられるとの伝説があるのです。
「ヨハネによる福音書」によれば、イエスが十字架に磔(はりつけ)にされた数時間後、息絶えたことを確認するためにローマの百人隊長がその脇腹を突き刺した際に使用された槍で、この時の直人隊長の名がロンギヌスであったことから「ロンギヌスの槍」(Lance of Longinus)と呼ばれるようになったとされています。
伝承ではロンギヌスは白内障を患い失明寸前でしたが、イエスの遺骸を槍で刺した際に、流れ出た血が目に滴り落ちると奇跡的に視力が回復…
その後も様々な奇蹟を目の当たりにしたことで、回心するとともに洗礼を受けたとされています。
後にカッパドキアでローマ軍に捕らえられ改宗を迫られますが、これを拒否し斬首刑に処されました。
これによりロンギヌスは殉教者となり、6世紀末ごろには聖ロンギヌスとして崇敬されるようになったのです。
「ロンギヌスの槍」に関する記述は、聖書はもちろん外典や偽典にも一切なく…
そのため様々な伝承が伝わるが、多くの伝承はイエスの遺骸を引き取ったとされるアリマタヤのヨセフによって持ち出されたことを起源としています。
4世紀エルサレムにて、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世の母であるヘレナにより、聖十字架や聖釘などと一緒に「ロンギヌスの槍」は発見されました。
以降、コンスタンティヌスを始め、テオドシウスといった歴代ローマ皇帝の手経て、8世紀にはフランク王国のピピン3世やカール大帝(シャルルマーニュ)、12世紀には神聖ローマ帝国の赤髭王フリードリヒ1世など、西ヨーロッパで権勢をふるった為政者たちの手を転々としたといわれています。
そして現在、ヘレナ大后が発見したとされる「ロンギヌスの槍」は、バチカンの宝物館に所蔵されています。
しかし、数多くの大公や国王を輩出した名門ハブスブルク家に伝わる聖槍を始めとして、聖槍=ロンギヌスの槍と称されるものはヨーロッパ各地に存在しており、その真偽は定かではないのです。
キリスト教ではイエスの受難にちなんだ物品やシンボルを受難具と呼びますが、数ある受難具の中でも、槍は十字架に次いで重要な位置を占めています。
槍がイエスの体を貫いたことで、その死が強調されると同時に、その後の復活が証明されるからです。
これに加え、強大な権力を誇った為政者たちが所有していたと伝承されていることもあり、聖杯と同様に、手に入れた者は世界を制するほどの絶大な力が得られると広く信じられているのです。
一方で聖杯とは大きく異なる点もあります。
それは槍を失うと所有者は破滅を迎えるとされている点です。
8世紀末~9世紀初頭に西ローマ帝国を統治したカール大帝は、「ロンギヌスの槍」を手にして以来、47回にも及ぶ戦いで連戦連勝を重ねましたが、槍を落とした途端に敵に刺され命を落としたという逸話が残っています。
また、神秘主義に傾倒していたといわれるアドルフ・ヒトラーも、「ロンギヌスの槍」を手中に収めた一人と噂されていました。
当時、ハプスブルク家が所有していた槍を奪い、常に手元に置いていたヒトラーは槍を失ったことで敗走し、その数日後に拳銃自殺を遂げたといわれているのです。
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