オプス・デイとは、1928年にスペインで創設されたキリスト教団体のことです。
外部からは秘密結社のように見える側面を持つため、一部では「聖なるマフィア」とも呼ばれていますが、本来は穏健な慈善運動団体です。
このオプス・デイは、司祭のホセ・マリア・エスクリバーによって創設されました。
エスクリバーの著作によると、彼は26歳のとき、黙想会で神が彼に何を望むかを悟り、病人や貧困層を救うための組織活動を始めたといいます。
この組織の名「オプス・デイ」とは、ラテン語で「神の御業」を意味します。
最古のキリスト教修道会であるイタリアのベネディクト会では、日々の労働とは別に、典礼の祈りなどの宗教的な務めをオプス・デイと呼んでいました。
オプス・デイは、マドリードを中心に多くの聖職者や一般信徒の間に広まっていきます。
しかし、1930年代後半には、スペイン内戦のため活動が困難に陥り、エスクリバーは一時的にスペインを離れることになりました。
第二次世界大戦後、エスクリバーの同志はヨーロッパから世界各地に組織を広め、1950年にはオプス・デイはローマ教皇庁から公認されたのです。
では、このオプス・デイが秘密結社のように見なされるのはなぜか?…
オプス・デイへの加入にあたっては、二人の証人の前で「聖性を求めて使徒職を実行することを宣誓する特別な儀式があります。
さらに、構成員の多くは、会社員や工場労働や商店員などの普通の日常生活を送りながら宗教的活動に従事しているのですが、若いメンバーは、男子のみ、女子のみの寮で共同生活を営む場合もあります。
確かに、こうした部分は秘密結社のようにも見えなくもありません。
また、オプス・デイは本来は政治団体ではないのですが、第二次世界大戦後のスペインでは、政治家や官僚に影から大きな影響力を与えていました。
スペインでは、1930年代末から70年代までフランコ将軍による独裁体制が続いていました。
フランコ政権は無神論を唱える共産主義を敵視していたため、カトリック教会の組織であるオプス・デイとの結びつきが強かったのです。
オプス・デイが「聖なるマフィア」と呼ばれる理由の一つとして、戦後もスペインのファシズム体制に寄与したという負の歴史も影響しているようなのです。
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