就職や大学進学で東京へ引っ越してきた人の口から、「都会の人は冷たい」という言葉をよく聞きます。
確かに都会では、困った表情を浮かべて立ちすくんでいても、あまり気にかけず過ぎ去っていく人が多いようです。
これは、都会に人が多いために起きる心理現象で、「私が助けなくても、きっと誰かが助けてあげるだろう」という「傍観者効果」によるものです。
傍観者効果は、ニューヨークで次のような殺人事件が起きたことによってクローズアップされました。
深夜、キティ・ジェノバースさんという女性が駐車場に車を停め自宅へ戻ろうとしたところ、男にナイフで突き刺されました。
ジェノバースさんが大声で「助けて!」と叫んだところ、マンションの多くの部屋の窓に明かりが灯りました。
ところが、誰一人として彼女を助けに行かず、警察に電話連絡した人もいませんでした。
その結果、ジェノバースさんは男に命を奪われてしまったのです。
これは、たくさんの部屋の明かりがついたのを見た住人たちが、「(私が助けなくても)きっと誰かが助けに行くだろう」、「(私がしなくても)誰かが警察に電話するだろう」と考えたために起きたことです。
心理学者のラタネとダーレーは傍観者効果を確かめるため、隣の部屋で人が倒れた場合、1分以内にどれだけの人が助けに行くかという実験を行ないました。
その結果、二人グループの場合は85%の人が救出に向かいましたが、6人グループになるとわずか31%…
しかも、最後まで助けない人が40%近くいたのです。
人数以外にも、自分より有能と思われる人が周囲にいる場合、傍観者効果はより強くあらわれることがわかっています。
つまり、エリートビジネスパーソンが行き来する大都会の中心地ほど、何かあっても助けてもらえる可能性が低いかもしれない…
ということかもしれません。
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