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達磨の「無功徳」の意味を知り自らをあらためる

6世紀前半、仏教に深く帰依(きえ)していた梁(りょう)の武帝が、中国禅宗の開祖とされる達磨大師(だるまたいし・ボーディダルマ)を招き、「私は寺を建て、僧を養成しました。どんな功徳が得られますか?」とたずねました。
達磨はすぐさま「並びに(すべて)無功徳」と答えたと言われています。

この「無功徳」の意味…
あなたはご存知でしょうか?
今回は達磨の「無功徳」の意味を知り、自らをあらためてみましょう。




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達磨の「無功徳」の意味を知り自らをあらためる


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武帝は仏心天子と呼ばれるほど厚く仏教に帰依していた皇帝でした。
多くの寺院を建立し、多くの経文を写させて複製し、自ら『涅槃経(ねはんぎょう)』という経典について講義をするほどの見識も持ち合わせていたといいます。
武帝の心には、仏教発祥の地であるインドからはるばるやってきた僧に褒め讃えられ、認められたいとの思いがあったのでしょう。
だから武帝は達磨と出会った際、こう問いかけました。

「私はこれまでに多くの仏塔を建立し、経文を写し、多くの人を僧侶にしてきた。ほかにも沢山のことをした。これら仏教のためになる行いをしてきたことに対し、どのような功徳があるだろうか?」
武帝にしてみれば、自分ほど仏教のために尽力した人間はいないという自負があったに違いありません。
だから、さぞかし素晴らしい功徳がもたらされるものと思い、達磨に問いかけたのです。
しかしこの問いに対する達磨の答えは、まったく武帝の意に反するものでした。
「無功徳」
つまり、達磨は「何の功徳もない」と言い放ったのです。
武帝にしてみれば、何とも冷たい一言に聞こえたでしょう。

「なにっ!? 何の功徳もないだと! なぜだ?」
「寺を建てる。経典を写す。僧侶として出家させる。それらの行いによって功徳を得ようとするのは、世俗の成果を求めているにすぎないからです」
「では、貴僧のいう功徳とは何なのだ!?」
「損得にかかわることのない浄らかなものです」
納得のいかない武帝は、この後も次々と達磨に質問を投げかけるのですが、結局、武帝には達磨の言葉の意図はわかりませんでした。
達磨のほうも「これはまだ仏法の話が通じるような状態ではないな」というような思いがあったようで、さっさと武帝のもとを去ると揚子江を渡って少林寺にこもってしまいました。
これが無功徳という禅語が生まれた時の有名なエピソードです。

笑顔で挨拶したら、笑顔で返してほしい…
人助けをしたら、お礼の一言くらいは欲しい…
私たちは無意識にリターン(見返り)を期待しがちです。

功徳とは良い行いに対する報い…
でも功徳を得るために善行をしても功徳はもたらされません。

修行や礼拝も自分の心を捨て、無心で行うことが第一です。
それを喝破した達磨のことばが「無功徳(功徳などありゃしません)」です。

日々の行いも同じです。
自我を満足させるための行為を禅は切り捨てます。

何の見返りも期待せず、当たり前のこととして、人にやさしく思いやりをもって接することです。
ボランティアの心もそうではないでしょうか。

「私はこんなに良い行いをしました」と周囲にアピールしてなんになるでしょうか。
席をゆずったり人を助けたりしたとき、お礼のことばも返ってこなくてもいいではないのでしょうか。

良いと信じることを無心に行動に移せる人が本当の大人です。
良いことをして自分の気持ちが安らぐのは、それが人本来のとるべき道であり、あるべき姿だから…
それで十分ではないでしょうか。




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