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中国三大宗教(三教)の一つ「道教」をご存知ですか?
儒教・仏教に並ぶ漢民族の土着的・伝統的な宗教が「道教」です。
ここでは道教とは何か?…
道教とは、中国民族の固有の生活文化のなかの生活信条、宗教的信仰を基礎とした、中国の代表的な民族宗教です。
それは漢時代以前の巫祝(ふしゅく)信仰や神仙方術的信仰および民衆の意識などが基盤となって、漢代に黄老(こうろう)信仰が加わり、おおむね後漢(ごかん)末から六朝(りくちょう)時代にかけて形成され、現在でも台湾や香港(ホンコン)などの中国人社会で信仰されています。
初期の道教的信仰は、不老不死の神仙を希求したり、巫術や道術による治病や攘災(じょうさい)に重点を置いたが、儒教や仏教と競合し、影響しあい、内的修養や民衆的道徳意識の堅持を中心とする信仰をも重視するように発展しました。
それでは道教の教えとその歴史について詳しくお話しましょう。
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道教とは何か?…道教の歴史
道教は、中国で誕生した多神教です。
中国では今日、儒教が宗教とみなされなくなったため、中国生まれの唯一の民族宗教ともいえます。
道教は、中国民族(漢民族)の間で自然発生的に継承された民族固有の信仰に端を発する…
とされています。
教祖が誰であるか、いつ成立したかということはわかりません。
現在、中国以外では台湾と香港などの華僑社会で信奉されています。
道教には、民衆道教と成立道教(道観道教)があります。
民衆道教とは、古来民衆の間で信奉されていた善行・悪行についての道教的解釈を中心とする信仰や習俗をいいます。
成立道教とは、古くからの民間信仰にもとづきながら、神仙説、祈禱儀礼、養生術・道徳・占術などを加味して、成立させた教派のことです。
道教の歴史は2世紀中頃までに成立した太平道と五斗米道(天師道)にはじまります。
この扉は今日、原始道教と呼ばれていますが、その教えは治病のための呪術が中心でした。
太平道派は、のちに信徒が中核となって黄巾の乱(184年)を起こしたた断絶しましたが、五斗米道派は一時(約20年間)四川省方面で宗教王国を形成し、のちに天師道と改名して、現在まで存続しています。
この扉には、共通した教えの説き方が見られ、両道とも、人々の行為を監視する神の存在(太平道は、天神に依頼された鬼神。五斗米道は、天・地・水を司る三官の神々)を説き、治病のためには、その神に悪行の反省をしなければならないと教えています。
道教は、南北朝時代の5世紀に寇謙之が開いた新天師道によって大成されました。
寇は北朝の魏の王室と結びつき、一時道教が国教となるまでに発展させました。
この時代、道教は神仙思想(人間の肉体を良好な状態で不老長生せしめうる根本原則)を中心として、神仙申山思想術・儀礼・天界・神々などの教えを整え、国家の儀礼を執行し、経典(『道蔵」)も多くつくられました。
その後も道教は、南北朝から唐、宋時代を通して国から特別の保護を受けていたため、道士(仏教の僧に相当)の堕落が民衆から指摘されるようになりました。
唐時代には、道教に取り入れられた道家思想『道徳経』を説いたと伝えられる老子が、王室と同じ姓だったことから、道教は特別扱いを受け、そのことが後代、道教の教祖は老子であると思わせる原因となりました。
宋のあとの金朝時代(12世紀)に入って20社会が貧困から混乱期を迎え、道教も内部から革新の気運が生じて、全真教、真大教、太一教の三教派(教団)が誕生しました。
前二派は儒教・仏教・道家三教思想と同源論に立ち、特に禅思想に強く影響されています。
太一教は旧道教的改革派といえます。
明・清時代の道教は、国家の統制下にあって伝統を維持するだけとなり、今日に至っています。
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道教とは何か?…道教の教え
道教の教えを記した書籍を『道蔵』といいます。
仏教の経典を集大成した『大蔵経』に相当する道教経典の集成本ということで『道蔵』と呼ばれています。
この『道蔵』は11世紀のはじめに編集され、以後数回手直しされていますが、現在用いられているのは明代に編集された『道蔵』の複製本です。
『道蔵』は三洞(洞真・洞玄・洞神の三品)と四輔(前者を補充する太玄・太平、太清正の四部)の7部によって構成されています。
これらの経典は、主要な教派の教えを集録したものです。
道教の教えの内容は、大きく4つに分けることができます。
その第一は、天地の成立や天界の様子、多くの神々や万物の根元などを説いた道教の中核的教えの部分です。
この部分では、万物の起こりから天界の有り様、神々の配置などが示され、仏教や中国封建社会の支配形態、アニミズム(精霊崇拝)の影響が反映されています。
また、神々については多種多様の神々が存在していますが、最高神としては元始天尊や玉皇上帝、高位の神々としては太上老君(老子:道徳天尊とも称する)・玄天上帝(北極星)・北斗神君(北斗星)・雷神などの神々が崇拝されています。
巷間の人気が高い神々としては、媽祖(天妃)・関帝などがあげられます。
道教の根本聖典の一つである老子の『道徳経』では、人間の作為の放棄、自然本位、清浄無垢の大切さが説かれており、その心がけによって生活を貫き通せば、宇宙万物の根本である道に帰一することができると教えられています。
この『道徳経』が提示した「道」の権威づけが、道教の思想的側面に取り入れられています。
第二は、祈禱の儀式や護符、占術や仙術などの方術的教えです。
祈禱の儀式では、様式がきちんと整っており、呪術的歩行などさまざまな事柄におよんでいます。
また護符は、目的に応じてあらゆる種類がそろっています。
仙術としては、道教の重要な経典の一つ『抱朴子(ほうぼくし)』(葛洪著:317年の著作、雅号は書名と同じ)に雨乞の法。
空中歩行の法、鬼神を使う法などの仙術の具体的な方法が説かれています。
第三は、養生法です。
道教の主目的の一つが不老長生におかれていることから、この分野はとりわけ重視されています。
そのため、食物のことから調息・房中術などが説かれ、仙術の根本として、金丹(錬金術によって金属からつくられた薬。不老長生の妙薬)のつくり方が示されました。
これらの神仙術を集大成した書物が『抱朴子』であったため、同書が道教の重要経典の一つとされているのです。
第四は、倫理・戒律的分野です。
人倫(道義)や国法に従うことを説き、儒教の影響を強く反映しています。
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