アメノミナカヌシノカミ(天之御中主神)の次に世界に現れるのが、タカミムスヒノカミ(高御産巣日神)です。
この二神の歴史は古く、アマテラスオオミ(天照大御神)の信仰が普及する前から「ムスヒ」の神として敬われていたといいます。
「苔(こけ)むす」というように、ムスヒの「ムス」とは植物の生成力をいい、「ヒ」は霊を意味します。
宇宙の中心をなすアメノミナカヌシの次に、地球の生命の源である植物を繁茂させるこの二神が誕生したことになるのです。
二神はもともと同一神だったのですが、中国の陰陽思想の影響で陰陽二神に分かれたといわれています。
「古事記」によると、タカミムスヒは別名をタカギノカミ(高木神)ともいうのです。
その名はタカミムスヒより古く、草木を高々と生育させる神を意味…
そこから農耕をつかさどる神になっていったのでしょう。
その出自は古く、各地に伝承されていた植物や稲の神が「古事記」や「日本書紀」に取り入れられていったものと思われます。
天皇の即位のときに行なわれる大嘗祭(だいじょうさい)や、毎年陰暦の二月四日に五穀豊穣を祈って行なわれる祈年祭(としごいのまつり・きねんさい)でもこの神が祀られるということからも、農耕神の性格がうかがわれます。
タカミムスヒは、神話の重要な場面に登場してドラマを推進する名脇役…
「日本書紀」では、天孫であるニニギノミコト(邇邇芸命)が天つ国(あまつくに)である高天原から、この葦原(あしはら)の中つ国(なかつのくに)に降臨するとき、あらかじめ天つ神であるアメノワカヒコ(天若日子)を中つ国に派遣し、中つ国の支配者であるオオクニヌシノカミ(大国主神)と交渉させて穏便に国を譲るように画策しています。
また、神武天皇が東征するときには、熊野で苦戦する天皇にフツノミタマ(布都御魂)という剣を与えて加勢し、大和政権樹立の後押しをしているのです。
高御産巣日神は、言わば天つ国のフィクサー的な存在なのです。
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