テレビの健康情報番組で「〇〇が体にいい」と紹介されると、小売店の店頭でたちまち売り切れる…
こんな風景は、すっかりおなじみになりました。
世界一の長寿国といわれて久しい日本…
長生きするからには、できるだけ健康な体でいたいものです。
健康が約束されるなら、経済力をが許す限り、ありとあらゆる健康法を実践したいと思うのは、当然ともいえるでしょう。
その反面、「△△が体によい」と聞けばそれだけを食べたり、逆に「××は体によくない」と言われれば、まったくそれを口にしなくなることもあります。
他にも、急激な運動のし過ぎで体を痛めたり、あやしげな健康食品に手を出して、かえって健康を害したり…
また、ダイエット中の人に多いのが、不足している栄養分をサプリメントで補おうと、大量のサプリメントを食品の代わりに摂取する例です。
つい過剰摂取をしてしまったり、粗悪なサプリメントをとったりして、かえって健康に悪い影響をおよぼすこともあるほどです。
文豪・夏目漱石は、そのように流行の健康法に飛びついては徒に終わる人間のさまを「吾輩は猫である」の猫の主人(彼の場合は胃弱)に託して揶揄してみせました。
若くから心身の病に悩まされた漱石が、流行の健康法に並々ならぬ関心を注いだのは想像に難くありません。
人間の肉体は10代でピークを迎え、あとは老化の一途をたどるとさえいわれています。
新陳代謝のさかんな20代の頃は、まだその自覚がありませんが、新陳代謝が衰えはじめる30代から、自分の健康状態が気になりはじめます。
この頃から健康にこだわるあまり、健康を損なっている健康オタクが急増していくのです。
40代、50代は、生活習慣病のリスクが気になる時期でもあり、心はますます高まります…
では、このときに健康オタクになってしまう人と、健康への関心をほどほどに保っていられる人との違いは、どこにあるのでしょうか?
心理学的には「自己意識」と「自己評価」の作用の問題であるといえます。
自分の健康状態を意識する(自己意識)と、不安なところに目がいく…
数えあげればキリがありません。
一方で、「健康な状態とはこうである」という理想のイメージをもっている人もいます。
自分がもっている健康な人の理想のイメージと現実の自分には、たいていの場合、大きなギャップがあり、そのために自己評価が下がって、不安感をもつことになるのです。
健康オタクは、この不安感に過剰に反応し、これを解消するために、様々な健康法を試しているのです。
メディアでとりあげられる「ガン予防〇カ条」のすべてを正しく実践すれば、絶対にガンにならないという保証はないでしょう。
守らなければと思いつめるあまり、精神的なストレスから発ガンするという可能性も、なきにしもあらず…
質のよい睡眠をとり、適度な運動を行ない、正しい食生活を守れば、健康的にすごせるとわかっていても、それを実践できないのが現代社会…
少しでも確かな保証が欲しくて健康オタクになるのも、しかたがないのかもしれませんね。
だが、何ごとも「過ぎたるは及ばざるが如し」なのです。
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