聖書は誰が書いたものなのか?…
そんな疑問を抱いた歴史学者は多いでしょう。
結論から言うと「旧約聖書」と「新約聖書」はいずれも、多数の人間が異なる時期に記した内容を集めた共著で、明確な著者といえる人物はいません。
現在知られている一般的な聖書は、旧約39巻、新約27巻から構成されています。
「旧約聖書」はそれぞれの部分がユダヤ教の預言者モーセや、その後継者ヨシュア、祭司エズラなどの数々の人々によって書かれたとされています。
ただし、あまりに古代の話なので、本当にモーセらが直接書いたという確証はありません。
特に「旧約聖書」の最初の部分である創世記の内容は、ユダヤ教の成立より古くからの民間伝承と思われる部分も多いのです。
たとえば、西アジア地域のメソポタミア神話やギリシア神話には、創世記での神による大洪水とノアの箱船の話にそっくりな伝承が出てきます。
このため「旧約聖書」の内容は、モーセの時代から後代まで名もない人々の間に伝わっていた話が、後からまとめられたものと解釈することもできます。
歴史上で、モーセに率いられたユダヤ民族の出エジプトは、紀元前13世紀ごろの出来事とされているのですが、「旧約聖書」の内容が最終的に確定したのは、千年以上もたった1世紀のことです。
なお、現在普及している「旧約聖書」は、紀元前3世紀にギリシア語に訳されたもので、七十人訳聖書と呼ばれています。
一方「新約聖書」は、イエスの弟子たちが記したとされています。
イエスの生涯とその言行録である福音書の部分は、それぞれマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4人による記録…
他の部分も、弟子たちの手紙などで構成されているのです。
これらもマタイやペトロが直接に記したのではなく、口伝で残されたものが、あとから文字に記されて整理された可能性は否定できません。
「新約聖書」が現在の形にまとまったのは、やっと2世紀の中ごろだといわれています。
「旧約聖書」と「新約聖書」は、現在の66巻にまとめられるまで、様々な版が入り乱れているのです。
中には、後から書かれた偽典ではないか?と疑われるものや、正式な聖書には含まれない外典とされるものも多く存在しています。
しかし逆にいえば、これだけ正確な作者やルーツが明らかでないからこそ、聖書はどこか神秘的な雰囲気を漂わせた書物だともいえるのでしょう。
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