こんな話を聞いたことはありませんか?…
「夜にツメを切ると親の死に目に会えない」。
しかし元をたどると、実はこの言い伝えは親の死に目とは関係がないのです。
そもそも日本では古くから、ツメを切る行為そのものが縁起の悪いことだとみなされていました。
人体の一部であるツメには霊魂が宿るとされていたのです。
「古事記」では高天原で暴れまわったスサノオが、罰としてツメを切られています。
また「日本書紀」では、「霊魂が宿るツメを幽気が暗躍する夜に切ってしまうと、自分に悪影響が及ぶ」として夜のツメ切りを戒めています。
作家の不二龍彦は、中国の怪鳥・姑獲鳥(うぶめ)が由来していると指摘しています。
姑獲鳥は夜に飛びまわって人間のツメを食べる鳥で、出会うと凶事が起こるとされました。
そのため姑獲鳥を招くようなツメ切りを夜に避ける…
という風習が生まれたということだったのです。
夜にツメを切ることと親不孝が結びつくのは、江戸時代ごろからとされています。
当時は現在のような安全なツメ切りがなく、小刀でツメを切っていました。
電灯がない夜は暗く、ツメを切っている時に小刀でケガする危険があったのです。
ここで夜のツメ切りという行為が、親から授かった体を粗末にする親不孝と結びつきました。
そこから同じく親不孝である「親の死に目に会えない」という言い伝えが生じたのです。
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