日本の神道では、水を用いて世俗の汚れを落とすという禊や清めの儀礼が重視されています。
キリスト教でもこれによく似た概念があり、教会で洗礼や聖職者による清めの儀礼などのために使われる専用の水が聖水なのです。
普通の水と聖水はなにが違うのか?…
というと、聖別(祝別)を受けていることなのです。
カトリック教会や東方正教の教会では、聖水に限らず、正式に叙階(聖職者に任命すること)された司祭によって祈りを捧げられた物は「聖別された物」とみなされます。
したがって理屈のうえでは、聖別を受ける前の水は、別に水道水でも市販のミネラルウォーターでも井戸のくみ水でも構わないのです。
なお、聖水だけでなく、ミサで参列者に配られるパンとワインも聖別を受けたものです。
敬虔なキリスト教信徒の間では、聖水には、身体的な危険や悪魔などを祓う魔除けの効果があると伝えられています。
日本の慣習で、塩に清めと魔除けの効果があるとみなされることに似ているかもしれませんね。
聖水は信徒の洗礼に使われるほか、日常的に聖職者や信徒が儀式のため指で十字を切る前、その指を洗浄するさいに用いられます。
余談ながら、このとき使うのは親指、人差し指、中指の3本…
これは、神、イエス、聖霊の三位一体の教義を象徴しています。
また、日本の葬礼では死者に末期の水(死に水)を与えるが、キリスト教の葬礼では棺に聖水を注ぐ習慣があり、これを撒水といいます。
聖水はもっぱら、信徒の洗礼、復活祭、葬礼など、儀式のたびに専用に聖別が行なわれるが、大きな教会ではくみ置きされている場合も多いのです。
カトリックや東方正教の教会では、よく建物の前に風呂桶のような大きな聖水の鉢があったり、建物内に洗面台のような聖水置き場が設置されています。
なお、プロテスタント派も洗礼の儀式などを行なうが、宗派によっては特別に聖水を用いず、教会にも専用の聖水置き場を設置してない場合もあります。
これは、カトリックから分裂したプロテスタント派は、聖書のみに従い、聖別を行なう「正式に叙階された司祭」の権威を認めないためのようです。
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