行列や人だかりができていると、その先に何があるのか、気になってソワソワする…
急いでいるのに、わざわざのぞきこんで、「なあんだ、つまらない。見て損した」と、落胆することも多い…
このように行列や人だかりが気になるのは、なぜなのでしょうか?
それは、他人と同じことをしたくなる「同調心理」がはたらいているからなのです。
同調心理とは、集団に属する個人が、「集団から嫌われたくない」、「集団に好かれたい」と思う心理のことです。
人だかりや行列という集団から、逸脱してしまわないために行なう「自己防衛的行動」ともいえるでしょう。
昔から日本人は行列好きを自認しています…
町単位で責任を負うことを求められた江戸時代の町人文化の名残りで、集団から逸脱したくないという心理が強くはたらいているのかもしれませんね。
また、他人との競争に負けたくない、損をしたくないという欲求もひそんでいます。
さて、本題となっている件に話を戻せば…
駅のエスカレーターや動く歩道で、人が歩いていると、ついつられて歩いてしまうという人も多いはずです。
この現象にも、やはり人だかりや行列のケースと同じことがいえるのです。
では、なぜ特に急ぐ理由もないのに、エスカレーターを歩いて、急ぐ人がいるのでしょうか?…
他人より少しでも前に進むことで、優越感を得ている人もいるのでしょうが、急いでしまう人の多くは、実は根底に無意識の不安がはたらいているのです。
人は不安を感じると、様々な行動でそれを解消しようと試みようとします…
普通、不安になると行動が抑制されると思いがちですが、実はまったく反対に、促進される場合もあるのです。
つまり、急いだり焦ったりするのは、不安を解消するために、行動が促進された結果なのです。
そして、エスカレーターは、安全上の配慮からスピードを落としています。
このスピードが、自分のテンポとあわないと感じて、イライラするために歩いてしまうという人もいるでしょう。
人は誰でも、自分の体の周りになわばりをもっています…
それが「パーソナル・スペース」ですね。
進んでこの中に入れるのは、よほど親しい間がらの人であり、見知らぬ他人がここに入ると、ほとんどの人は不快感を覚えます。
エスカレーターや動く歩道を必ず歩いてしまうという人には、「パーソナル・スペースにいつまでも他人を侵入させておきたくない」という心理もはたらいていると見ることもできるのです。
また、パーソナル・スペースを確保できなくなると、人はストレスを感じます。
たとえば、電車のシートや飲食店のカウンター、公衆トイレなどで、余裕があればできるだけ他人と離れて(あるいは、ひとつずつ間をあけて)座るのも、実はこのためなのですね。
混雑しているエスカレーターの場合、パーソナル・スペースを確保できないため、一秒でも早く、そこから抜け出したいという無意識の心理がはたらいているのす。
もっとも、本来エスカレーターは、歩いてはならないことになっています…
なかなか先に進めなくてストレスを感じるかもしれなませんが、じっとしておくのが、社会のマナーであることもお忘れなく。
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