まんが「日本の昔話」で、動物の常連といえば、なんといってもキツネとタヌキでしょう。
キツネやタヌキが人を化かす話は、昔からたくさん伝えられています。
たとえば、「狐女房」…
キツネを助けた男の元に女が訪ねてきて女中に使ってくれといいます。
家においてしばらくすると、二人の間に子供ができました。
しかし、あるとき女が尻尾で掃き掃除をしているところを見つかり、山へ帰ってしまいます。
のちに子供は鳥の言葉がわかる「聴き耳」という特別な力を授かりました。
また、酔っぱらいに肥溜(こえだ)めを風呂だと思わせたり、森の中で同じ道を延々と歩かせるなど、キツネが人を化かす話は日本全国に伝わっています
タヌキの話は、キツネに比べるとユーモラスなものが多いようです。
よく知られている「ぶんぶく茶釜」や「カチカチ山」など、人を化かしたり、いたずらしたりはしますが、手痛いしっぺ返しを食らってしまいます。
キツネやタヌキが人を化かすと考えられるようになったのは、人里近くに降りてきながら、人に懐かないからとも、音に驚いて死んだふりをし、猟師が近づくとあわてて飛び起きて逃げていくからともいわれています。
中国では、周の時代に九尾の狐が王妃を食い殺して化け、王を手玉に取って国家を転覆させたという伝説が残っています。
この九尾の狐が、日本に渡り、玉藻前(たまものまえ)として宮中に仕え、鳥羽上皇(とばじょうこう)をたぶらかして暗殺することをくわだてたという伝説もあるのです。
これが歌舞伎や人形浄瑠璃で取り上げられ、人々の間に広まったので、キツネやタヌキは人を化かす動物だと信じられるようになったという説もあります。
いずれにしても、キツネもタヌキもすでに日本の物の怪の中では主役級の扱いを受けています。
それだけ、身近にいた動物だったということでしょう。
今はなかなか野生のタヌキやキツネに出会う機会はありませんが、次々と住処を追われる彼らにしてみれば、人間の方こそ物の怪なのかもしれません。
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