「新約聖書」の福音書によれば、イエス・キリストは洗礼者ヨハネとの出会いのあと、荒野で40日間の断食を行ったとされています。
そして、断食を終えて空腹を覚えていたイエスのもとに悪魔が現われ、言葉巧みに彼を誘惑することで神の道から外れさせようとしました。
悪魔がイエスに対してしかけた誘惑は3つです。
一つ目は、空腹に苦しむイエスに、「おまえが本当に神の子ならば、石に向かってパンに変わるよう命じたらどうだ?」というものでした。
この言葉に対してイエスは、「人はパンのみに生きるにあらず」という有名なセリフをはいて、誘惑を払いのけています。
ちなみに、「パンのみに生きるにあらず」に続く言葉は、「人は神の口から出る一つ一つの言葉によって生きるものだ」というものですが、こちらはあまり日本では知られていないかもしれません。
二つ目の誘惑は、悪魔がイエスをエルサレム神殿の屋根の上までつれていき、「おまえが本当に神の子ならば、今すぐここから飛び降りてみろ」というものでした。
神の子ならば、天使が助けてくれるはずだから、無事に降りられるだろうということです。
しかし、イエスは「神を試してはいけない」と言って、この挑発をしりぞけました。
つまり、たやすく神の力の加護に頼ってはいけないという意味なのでしょう。
次々と誘惑をはねのけられた悪魔ですが、あきらめずに三つ目の誘惑をしかけてきます…
悪魔は世界が見渡せる高みまでイエスを引き上げると、「もし私にひれ伏すならば、この世界をすべてお前にあげよう」と囁いたのです。
しかし、イエスは「わたしは神だけに仕える」といって、悪魔の誘惑を拒絶…
こうして、全ての誘惑をしりぞけたイエスは、荒野を離れ、伝道の生活に入っていくのです。
ところで、この荒野でイエスと向き合った悪魔、暴力などで無理やりイエスの心を変えようとしたのではなく、イエス自身が自発的に神の道から外れるようにと、あの手この手で迫るのは、見方によっては神の代理人として、イエスの信仰心の固さを試したようにも受け取れます。
実際、「旧約聖書」の「ヨブ記」では、悪魔は神の協力者として人間を苦しめたこともあるのです。
この記事へのコメントはありません。