例えば、人が多い公共の場、駅構内や電車の中などで、階段から落ちたり、倒れたりした人がいたら、あなたは周りを気にせずすぐに助けに手を貸しますか?
すぐに助けに行く!という頼もしい人もいるでしょう。
これを「援助行動(えんじょこうどう)」と言います。
援助行動とは他者が困難に陥っている場合に自らの多少の犠牲を覚悟した上でその他者を助ける行動のことです。
しかし、多くの人は、まず周りの状況を確認するのではないでしょうか。
自分が行かなくでも誰かが助けてくれるだろう・・・
こんなに人がいるんだから、わざわざ自分が行かなくても大丈夫だろう….、などと考えます。
心の中では、すぐ助けないと!と思っていても、率先して行くことがなんだか恥ずかしい….。
しかし、自分が行かなかった代わりに別の人がすぐさま駆けつけてきて、その光景を見て後々とても罪悪感を感じてしまったり….。
そうです。このような心理は人が多ければ多い場所ほど発生しやすいのです。
ここでは、この援助行動を抑制させるメカニズムについて詳しく見ていきたいと思います。
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援助行動を抑制させるメカニズムについて
アメリカで以前、あるマンションに住む女性が殺されるという事件が起きました。
事件後、マンションの複数住民が、「助けて!」と長時間にわたって叫ぶ女性の声を聞いていたと、警察に証言しました。
「誰かがすぐに通報していたら、被害者は助かったかもしれないのに」と、誰もが思う事件ですが、これは、なにもここの住民に特別な問題があったのではありません。
人を助ける行動を援助行動といいますが、これを抑える働きをするメカニズムがあるのです。
心理学者のラタネとダーリーが行った実験で、互いを知らない同士の何人かに、顔が見えないようへッドホンを通して会話をさせるものがあります。
会話の途中、サクラの一人が急に具合が悪くなったとき、被験者たちがどんな行動をとるかを調べました。
その結果、グループの人数が多ければ多いほど、援助行動は起こらなくなることがわかりました。
これは、傍観者効果(ぼうかんしゃこうか)と呼ばれるもので、被験者がみな「自分が助けなくても誰かが助けるだろう」(責任の分散)と考えてしまうから起こります。
また、「もし助けに行って何事もなかったら恥ずかしい」(聴衆抑制)、「ほかの人も助けに行かないのだから、たいしたことではない」(多数の無知)などの抑制的な心理が何重にも働くこともあります。
これが援助行動を抑制させるメカニズムの一つとされているのです。
けれど、これが知り合い同士の場合だと、傍観者効果はまず起こらなくなります。
「仲間を見殺しにするのは自分の気が引ける」(愛他的自己像)という心理から来る行動です。
刹那的な暴行事件が後を絶たない昨今は、いつ自分が同じ立場になるかわかりません。
見知らぬ同士でも助け合う気持ちを持っていたいものです。
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