ニュースなどで新興宗教がらみの事件が起こるたびに、信者に若い世代が多いことに驚きます。
なぜ若者たちは、宗教にハマるのでしょうか?…
アメリカの発達心理学者エリクソンは、これを青年期を自我同一性の確立のために試行錯誤する時期ととらえています。
幼年期から青年期に至るまで、わたしたちは両親をはじめとする家族やテレビ、本の中の主人公などとの感情的な結びつきを体験します。
それらの考えや行動様式などを、自分の中に取りこみながら成長していく…
青年期になると、それらを再吟味し、「本当の自分らしさ」をつくりあげることになります。
これがすなわち、「自分探し」です。
その作業には悩みや苦しみが多く、ときには自分はどこにもいないという絶望感に打ちのめされることもあるのです。
特に、人生の意義や価値を見出しにくく、先の見えない現代社会では、自我同一性の確立は、より困難な作業になってきます。
有名な心理学者のユングが「宗教とは精神療法の体系である」と 言ったように、宗教は教徒を無条件で受けいれ、認めることになっていたり、信者は宗教によって癒され、慰められます。
そのため、不安定で緊張した精神状態で宗教に出会うと、そこによりどころがあると感じ、たやすくのめり込んでしまうのです。
また、社会一般的に役割を終えたとみなされる老年期には、孤立や絶望を感じる人が多いもの…
やがてくる死への恐怖もあります。
こうした世代も若者たちと同様、宗教に癒しや仲間の共感、よりどころを求めて、新興宗教にハマる可能性が高いといえるのです。
さらに、若者たちが、普通ならば信じないような、いかがわしい新興宗教をなぜ信仰したのか?…
なぜそこからぬけ出せなかったのか?…
正常な状態なら自立した行動をとれるはずの人が、新興宗教組織のあやつり人形のようになってしまうのは、マインド・コントロールされていることが原因といわれています。
マインド・コントロールとは、人の意志を弱めて、その意思と感情と行動をコントロールするテクニックのことです。
社会一般から見て、新興宗教にハマるとは思えないような高学歴の若者が信者に多いことも注目されますが、実は、こうした人ほどマインド・コントロールにかかりやすいといわれています。
高学歴の人に多い自尊心の高さがその原因の一つ…
自分が教義や仲間にだまされていることを認めたくないため、自尊心を傷つけない言い訳を考えて自分自身を納得させ、マインド・コントロールさせてしまうのです。
新興宗教集団に限らず、悪徳商法の勧誘の手口としてもマインド・コントロールがたびたび使われています。
誘拐事件の被害者なども、加害者によるマインド・コントロールを受け、健康な精神状態なら脱出できるような機会があっても、脱出する気力を失ってしまうといわれているのです。
マインド・コントロールは宗教だけに限らない、危険な心理テクニックなのです。
マインド・コントロールを解くためには、専門家による施術などが必要となります。
特に、宗教的なものに関しては、解くことが難しいといわれるのです。
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