中高年世代、いわゆるオヤジが口にする、「今どきの若者はダメだ」、「最近の若者は…」というセリフは、昔からオヤジの若者に対する典型的なフレーズでした。
実は、オヤジ世代が若かったころも、その時代のオヤジに同じことを言われていたのです。
その発言には多くの場合、怒りをともなっています。
けれども実は、オヤジは心の奥で、自分自身の現状に不満や怒りをもっていて、それを若者にぶつけていたのです。
こういう心の動きを、精神分析では「投影」といいます。
つまりオヤジは、無意識のうちに若者に八つ当たりしているわけなのですね。
「昔はオレもワルでさー」と、自分が若い頃、いかに普通の人と違っていたかを吹聴するのも、オヤジの特徴です。
特に酒を飲んでいるとき、あることないこと武勇伝を語るオヤジが多いかと思います…
内容は、ケンカや女性との関係が中心になるのですが、そのほとんどがデフォルメされているし、まったくのウソという場合もあります。
心理学的に考えると、自我や超自我の抑制がゆるんだとき、「原我」という人間(ここでは男)の本性が現われるためです。
この原我がもつ欲求には、攻撃的欲求と性的欲求があり、この二つの欲求が“ワル”という形になるのです。
攻撃的欲求(暴力)と性的欲求を自由に満たしたいという願望を、男は誰でも持っています。
自分は“ワル”でありたいと思っているのが男とも言えるでしょう。
しかし、一般社会の中で生きるほとんどのオヤジにとって、犯罪者になりかねない願望の実現は不可能です。
ですが、自分を本能的に生きるスゴい人間であるかのように、他人に対して誇示したい…
そんな心の動きを、武勇伝という形に変えてガス抜きしているわけなのです。
ただ、武勇伝を語る人ほど、実はたいして悪いことはしていないことが多かったりもします…
これは自分の潜在的な欲求が満たされていなければいないほど、「つまらない男に見られたくない、バカにされたくない」という感情が強くなるからです。
それで、武勇伝の中身が大げさになるのですね。
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心理学者のベックは、人が中年になると直面する危機として、次の4つを指摘しました。
➀身体的活力の危機
➁性的能力の危機
➂対人関係構造の危機
➃思考の柔軟性の欠如
➀は年齢とともに肉体が衰えていくために起こる危機で、これをのり越えるには、体力よりも知的な活動をいかに行なうかがカギになります。
➁の性的能力も、年齢とともに衰えていくことは避けられません。解決するには異性との関係を性的なものから、精神的なものへ移行させるしかないのです。
また、人間関係の固定化によって起こるのが➂です。
年齢を重ねると、人間関係は会社と家庭が中心になり、せまくなりがち…
積極的に新しい人間関係をつくっていくべきでしょう。
そして、思考の硬直化を指摘したのが➃…
オヤジになると頭が固くなる傾向があります。
自分のそれまでの考え方や物事への取り組み方にこだわらず、柔軟に新しい可能性を考えていくことが重要になのです。
とはいえ、「いずれは自分も」と謙虚にとらえ、大目に見てあげたいもの…
これは女性も同じなのです。
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