ご存知のように、19世紀イギリスの博物学者、チャールズ・ダーウィンの「進化論」によれば、人間は猿から進化したとされています。
発表当時、この学説は大きな反発を呼びましたが、現在では広く受け入れられています。
しかし中には、未だにこれを世迷言と呼んで退け、学校でこれを子どもたちに教えることに、猛反発する人々もいるのです。
「人間は神が創った、最初の人間はアダムとイヴだった」と、「旧約聖書」に書かれているからには、それこそが真実なのだ…
というのが、彼らの言い分です。
このように「聖書」の記述を全面的に信じ、それに矛盾する考えをすべて拒絶する態度を「キリスト教原理主義」といいます。
その信奉者は、特定の宗派に限らず、複数のプロテスタント諸派にまたがって存在しています。
とりわけそうした人々が多いのは、アメリカ合衆国なのです。
それは、この国の基礎を築いたのが、カトリックの迫害を逃れて、ヨーロッパから北米へ移住したプロテスタントたちであることに起因しているからです。
アメリカの主導権は、伝統的にプロテスタントが握ってきたのです(事実、歴代の大統領のうち、非プロテスタントは、カトリック教徒のJ.F.ケネディのみ)。
そのプロテスタント諸派の多くは「聖書」のみに忠実であろうとする「福音主義」を掲げています。
そしてキリスト教原理主義は、それが極度に先鋭化した思想なのです。
その先鋭化を促したのは、18~20世紀にかけて、断続的にアメリカ合衆国で流行した、「大覚醒」なる宗教運動でした。
「エホバの証人(ものみの塔)」、「モルモン教」などの新興宗教が生まれる背景にもなったこの運動は、近現代の風紀の乱れを批判し、伝統的なキリスト教道徳へ回帰することを、提唱しました。
キリスト教原理主義者も、まさにその伝統的道徳観にのっとり、避妊、妊娠中絶、同性愛を、神の摂理に反する行為として、激しく批判しています。
外部から見れば時代錯誤な集団にしか見えないが、米国の政治に彼らが及ぼす影響は小さくありません。
国際世論に反して強引にイラク戦争を起こしたブッシュ前大統領(子)を、熱烈に支持したのも彼らでした。
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