ヒンドゥー教をご存知の方は多くいらっしゃると思いますが、ヒンドゥー教の教えと基本思想をご存知でしょうか。
狭義のヒンドゥー教は、バラモン教から聖典やカースト制度を引き継ぎ、土着の神々や崇拝様式を吸収しながら徐々に形成された多神教です。
ここでは紀元前5~4世紀に顕在化し始めたとされるヒンドゥー教の教えと基本思想に関して、簡単にご説明しておきましょう。
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ヒンドゥー教の教えと基本思想を簡単に理解する
そもそもヒンドゥー教には教祖が存在しません。
その教えは、『天啓聖典』とされる四種の「ヴェーダ聖典」と多種の「古伝書」(インドの二大国民的叙事詩とされる『マハーパラタ』と『ラーマーヤナ』、民衆に愛唱されている『プラーナ(古譚)』、生活の法典『マヌ法典』など)、および哲学的諸文献や現代的宗教詩・神々への讃歌などによって示されています。
ヒンドゥー教には多種多様な思想が存立しているため、その教義を総括的に述べることは困難ですが、基本的なものを取り出してみると、第一に「業(ごう)」と「輪廻(りんね)」の教えがあげられます。
「カルマ」とは「行為の集成」のことです。
現世における行為の集成(業)が、来世における生の立場(カルマの結果によって与えられる天上界から地獄界に至る次の世での生まれ変わり)を決定し、今世における生の立場は前世の業の結果であるとされています。
この3世(過去・現在・未来)の生死の流転の繰り返しを「サンサーラ」と言います。
その繋縛を断ち切った状態が「解脱(げだつ)」であり、仏のような悟りに達した人のみがサンサーラから逃れることができるのです。
「解脱」への方法として示されているのが、ヨーガと神へのひたすらなる誠信です。
このカルマとサンサーラの思想はヒンドゥー教の中核的な教義を意味するばかりではなく、ジャイナ教や仏教にも大きな影響をおよぼしています。
次いで求められる思想(教え)は「法」です。
仏教では「法」とは、仏の教えそのものを示す言葉として用いますが、ヒンドゥー教では加えて「法」、「実利」、「愛欲」を包含するものとして理解されています。
「ダルマ」とは「未来永劫変わることのない永遠の法」と倫理・道徳上における「行為の規範」のこと、「アルタ」とは物質的、経済的な実利(利益)を追求すること、「カーマ」とは生殖に通ずる愛情.性愛の追求をいいます。
アルタとカーマは人間生活の生の営みを示し、ダルマがその営みを正しい規範によって教導するという関係にあります。
これらの教義の浸透によって形成されたインド人の生活上の秩序には、「種姓法」と「生活期法(四住期)」があるのです。
「種姓法」には、インド人の4つの階級(バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシュヤ・シュードラ)がそれぞれ遵守すべき行為の規範が示されています。
「生活期法」とは、人生を4つの期(四住期)に区分した理想的生活サイクルをいいます。
第一が、幼年期から師のもとで『ヴェーダ』などの聖典を学習する学生期…
第二が、学生期を卒業して家庭生活を円満に営み、日々の祭祀を怠らない家住期。
第三は、妻と共に、あるいは一人で世俗を離れて森林に住み、静寂な日々を過ごす林棲期…
最後が、この世への執着を捨てて各地を遍歴して修行生活を営む遊行期です。
インド民族はこれらの諸々の教えにもとづき、民族の生活法を構築しているのです。
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