「女房を質に入れても初鰹(はつがつお)」という川柳は、女房を質に入れてでも初物の鰹を食べたいという江戸っ子の珍し物好き、初物好きの気風を描いたものです。
質に入れられる女房はたまったものではないですが、それだけ初物は魅力的だということでしょう。
「初物を食べると寿命が七五日延びる」という俗諺(ぞくげん)もありますね。
では、なぜ初物がそれほど人を魅了したのでしょうか?…
昔は当然、現在のような冷凍・冷蔵技術はなく、自然の恵みである食べ物は、とれる季節にならないと手に入らず、旬に食べるしかありませんでした。
季節それぞれに旬の食べ物があり、旬の食べ物の栄養価は満点…
しかも初物はみずみずしく、生気がみなぎっています。
そんな初物を食べれば、その食材の若々しい聖でいただけて生命力がアップすると考えられていたのです。
では、なぜ七五日寿命が延びるのでしょうか?…
それは江戸時代のお裁きに由来しているといわれています。
情け深い奉行が、死刑前の罪人に「最期に何か食べたいものがあれば、申してみよ」といいました。
罪人は少しでも刑の執行を遅らせるために、季節外れのものを注文しました。
その結果、食材の初物が手に入るまで七五日長生きできたということです。
嘘か真かはわかりませんが、初物が貴重で、体にいいと認識されていたことは確かなようです。
また七五日といえば二ヵ月半…
季節が変わり目を迎える日数です。
初物をいただいたという江戸っ子の見栄は、一つの季節分くらいは満足感を持続させたのではないでしょうか。
「人の噂も七五日」というように、「初鰹いただいたんだってね。うらやましいねぇ」といわれるのも、七五日くらいまで…
気分のいいうちは、元気もみなぎるというものだったのでしょう。
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